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■ 住まいは文化 大阪市 船場の商家 旧小西家 商都の賑わいを感じる合理的で重厚な商家
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「住まいは文化」は、大工や建具職人など、伝統的な建築技術を持った職人たちの高齢化にしたがい、次第に失われていく住まいの知恵や文化・技術などを、日本全国の伝統的な家屋を訪ねる中でまとめてみたものです。貴重な文化遺産として保存するシリーズ本来の意図はもちろん、「和」のインテリアが日本だけでなく、欧米などでも注目される中で、温故知新の参考例として、現代、未来の家づくりに活かせればと考えています。
主の間にふさわしい、前栽を眺める広々とした12畳半の座敷。広い床の間、付書院など、数寄屋風の造り。

江戸時代に「天下の台所」と称された商都・ 大阪。なかでも船場は、淀川をはじめ多くの河川の船運と陸運という地の利から、商売の中心地として栄えてきました。小西家は、船場でも薬問屋が軒を連らねる道修町(どしょうまち)に立地しています。薬問屋だった小西家は、エタノールなど化学薬品の輸入などで得た財力を背景に、明治36年(1903年)に建てられました。

建築当初は3階建てで、大阪の都市開発に伴う道路拡張で道路に面した部分を削られる「軒切り」や、関東大震災(1923年)の後に地震に弱いという理由で3階が撤去され、現在の外観となりました。
第2次世界大戦の大阪大空襲では、焼夷弾が落ちるなど戦災に見舞われましたが、消火作業で守ることができたといいます。撤去された3階部分の棟に棟梁ら大工の名前が記してあったと思われますが、残念なことに散逸しています。
長年、コニシ株式会社(旧小西儀助商店)の本社として使用されてきたため、店部分は改装されていますが、座敷や蔵などは保存がよく、平成13年(2001年)に国の重要文化財に指定されました。また、大阪市の指定景観形成物にも指定されています。

小西家の外観。右手の棟が店、中央が住居、左に3棟の蔵が並ぶ。

道修町通りにある門をくぐると、通りに面して店を構えた「表家造り」と呼ばれる典型的な商家の様式です。畳敷きだった店は後に事務所用に改装されましたが、格子は当時のまま使われています。
前庭を抜け、内玄関へ。玄関と炊事場は、天井が吹き抜けになっていて、5段に組まれた頑丈な小屋組を見ることができます。炊事場には、竈(かま)が並び、井戸にはポンプが設置されていて、大人数の食事を賄うのに合理的な造りです。

通り庭の上部の小屋組。弧状の大梁が何重にも組まれ、表屋造りを支える。炊事場からの煙がこもらないように高窓が設けられている。
土間から内玄関を眺める。公共の場である店舗と、プライベートな居住部を隔てる。

内玄関を上がると、12畳半の座敷と仏間が屋敷の中央に配置されています。座敷は、畳廊下を挟んで前栽を眺められ、正月やお祭りのときに仏間と繋げて広間として利用しました。床の間前の畳は、特別に1畳半に誂えています。その意味は「商売益々繁盛」を「半畳」とかけたと言います。大阪人らしい洒落心と言えるでしょう。

屋敷の内装は、華美を嫌う商売人気質らしく装飾性を抑えながらも、屋久杉や桐柾目、栂、赤松、楠という上質な木材を使用した、本格的な数寄屋造りとなっています。また欄間や建具などに凝った意匠を施しており、上方文化の粋と言えるような、雅趣のある仕上がりです。

12畳半の座敷の床の間。装飾は抑えてあるが、栂材や屋久杉の一枚板を用いるなど、贅沢な造り。

2階には家族の部屋と、使用人のための部屋が15部屋あります。いずれの部屋も開口部が大きく、明るい印象ですが、とりわけ中央の10畳座敷は、床の間や琵琶床を配し、四方に障子やあかり取りが設けられ、庭を見晴らすことができます。

2階の10畳座敷の床の間。赤松丸太の床の間、琵琶床、飾り欄間など、細部の意匠にこだわった優雅な一室。
2階の女中部屋と台所を結ぶ階段。下部は物入れが設けられている。

建築当時の道修町は、流行の先端のような土地柄で、小西家でも、普及したての電話や電灯を取り入れ、またガラス戸を用いるなど進取の気風がありました。設置時期は不明ですが、2階に男女兼用で洋風の腰掛け便器が設置されています。水洗トイレが珍しい時代に、排水処理にも配慮したことが伺えます。それ以外にも、蔵と店の間の運搬用に、敷地内にトロッコのレールが敷設されていました。

あかり取りの桟と飾り部分。部屋ごとに異なる意匠で、趣を添える。

敷地の最奥部分に3棟の土蔵があります。大壁造、切り妻、黒漆喰塗りの重厚な外観が、小西家の印象的な外観となっています。 ビジネス街の中心地で、築100年を経ながらなお風格ある屋敷が保存された背景には、上方文化の担い手としての大阪商人の影響が見逃せません。

衣裳蔵と呼ばれる北西の蔵。下部は石と杉板張り、上部は黒漆喰塗りで重量感を感じさせる。

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