| ――和紙を現代に活かすには、工夫や創造が必要なのですね。 |
私は、和紙を現代の生活に活かすには、昔の和紙のままではなく、時代に対応した性能を新しく加えていくべきだと考えています。
新しい表現には新しい技術が必要です。
未来の伝統は、現代の新しい革新から生まれてきます。
その意味でもこれまでなかった新しい素材と組み合わせたり、建築家やインテリアデザイナーなど、他の分野で活躍する専門家の方々とのコラボレーションによって用途を広げていくことが、大切なことだと思っています。

| ――現代の住まいに、和紙はどのように役立つのでしょうか? |
和紙は、もともと障子や襖として使われるなど、日本の住まいにはなくてはならないものでした。和紙と住まいとは切っても切れない縁なのです。
今お話したように、私の制作する和紙の多くも建築空間で使われています。
和紙の魅力を一言で簡単に表現するのは難しいのですが、私が惹かれるのは、障子が醸し出すような空気感や気配です。
部屋の中にいて、障子を通して伝わってくる外の日差しの移ろいや気配、季節感などがとても好きです。
住まいの雰囲気は固定したものではなく、その時の使い方や気分の変化を受けて、それにふさわしいものに変わっていくのがいいと考えているのです。

同じリビングでも、お客様を迎えたり、家族の団らんや深夜に独りで読書や音楽を聴いたりする時とでは、部屋の雰囲気がもっと変わっていれば素敵ですよね。
空気感を変えることで、空間や環境に新しい変化をもたらすことができます。そうしたら、そこにいる人も、もっとリラックスできたり、楽しくなったり・・・・、空間を十分に味わうことができると思うのです。
人が暮らす住まいですから、その人の気持ちを映し出せる、その人の浸りたい気分になれるような空気感を、和紙と光の演出でできたらと思います。
仕事が終わって落ち着いた時、食事の時、掃除の時、それぞれの空間や自分の気持ちに合った空気感が部屋に漂うことが大切です。
こうした空気感をつくり出す家具や建具の素材として、私は和紙がもっと使われてもいいように考えているのです。障子や襖で和紙の役割が終わってしまったように考える人もいますが、和紙には、もっともっと大きな可能性があるように考えています。


| ――和紙で住まいを変える。具体的にどんな方法が考えられますか? |
例えば、パーティションやスライディングドア、スクリーンなど、現代の住まいに使われている家具や建具に和紙を使って、新しい空気感を持ち込みたい。
きっと魅力的な住まいの空間ができあがると思います。
日本の住まいは、もともと動かすことのできる間仕りや障子などで、空間をその時々の暮らしに応じて自由に仕切ってきました。
戦後はヨーロッパやアメリカ型の空間をきちんと仕切る考え方が広まり、家の間取りもずいぶん固定的になったような気がしますが、もともと住まいを住まい方に合わせて柔軟に使えるのが日本の住まいのよさだといえるのです。
今、皆さんが使っていらっしゃる住まいに、和紙が伝える空気感を取り入れ、自然の採光や照明で移ろいや雰囲気の変化を楽しめたら、どんなに素敵かと思うのです。
障子や襖など、もともと和紙が活躍してきた住まいの空間の中で、和紙と照明器具を上手に使うことによって、もっと暮らしを豊かに演出できる可能性が和紙にはあります。
パーティションやスライディングドア、スクリーンなど、今使われている家具や建具に、新しい和紙の可能性を盛り込むことによって、住まいのもつ可能性も広がるように思えるのです。
| ■東京・汐留の松下電工NAISミュージアムで開かれていた「和紙と光のアート展 堀木エリ子の世界」(2003年12月〜翌3月)に出品された作品。 |
| それぞれの画像をクリックすると別ウィンドウで大きな画像が表示されます。 |
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MOON |
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一枚漉き幅15mの大型和紙で、「月」と 「日」をテーマにした連作。 |
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| 住まい空間への提案として出品された和紙のパーティション |
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骨組を使わずに立体的に漉き上げたライトオブジェ |
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| ――最後に、堀木さんご自身はどんな住まいの空気感がお好きですか? |
仕事を終えた深夜、和紙のパーティションの静かな空気感に包まれて、ワインを飲んでいると、暖かな開放感があります。ここちよさの余り、ついつい鉛筆をもって次のデザインを考えてしまいます。 |