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こんな暮らしがしたい!

 
外観
鉄のボックスを積み重ねたセル・ブリック。構造がそのまま内側では収納を兼ねているので、広い内部空間を確保できます。構造自体に着目したセル・ブリックは、狭小住宅の新しいスタイルとして注目されています。


地域や場所、家族構成などに合わせて住宅はできあがります。その形やアイデアは建て主の考えによって変わります。それを形に表現してくれるのが建築家というパートナーです。従来の狭小住宅に見られる壁の薄さを追求するスキンハウス(※)から、空間に深度や密度を与える「セル・ブリック」と呼ばれる住宅が誕生しました。建て主と建築家の思いから実現したコラボレートの居住空間をご紹介します。
(※スキンハウス…構造や外壁を薄くすることで、狭小住宅の内部空間を広げようとする住宅プロジェクトのこと)




  静かな住宅街の角地に建つ「セル・ブリック」の住宅は、東京都杉並区にあります。
まず目に入ってくるレゴブロックのような外壁は、鉄のボックス270個を積み重ねています。施主の「おもしろい家に住みたい」という考えが、建築家と構造設計家の手によってセル・ブリックという形に表現されました。
セル・ブリックとは、鉄板でつくられた幅900mm×高さ450mm×奥行300mmのボックスを千鳥格子のように積み上げたもので、開口部にガラス窓がはめ込まれています。天気のいい日にはその開口部からは、まるで木洩れ日のようなやわらかい日が差し込んできます。同時に、ボックスの奥行を介すことで気になる外からの視線はシャットアウトし、日差しだけが入り込む明るい家が実現しました。また、鉄のボックスを積み重ねたことで遮音性、耐震性にも優れた構造になっています。
まるで木洩れ日の中にいるようなのに、外の人からは見えない。この壁は棚としては薄い6mmですが、ボックスとしては30cmの奥行きがあります。



  この住宅のおもしろさは外壁だけではなく、その住空間でもさまざまな形になって表れています。外から見た鉄板のボックスが内側の住空間では、壁一面の収納の小箱になっています。家を建てるのに施主が要望したのは、「物が多いので収納がいっぱいあること」「あまり人に見られたくないので閉鎖的に、だけど明るく」「子どもが3人いて、一緒に住むわけでもないが部屋は3つ欲しい」といったことでした。これらの要望がセル・ブリックにすることで実現したのです。建築の世界の原点とも言えるヨーロッパでは壁は積むのが原点、それと広い敷地を確保しにくい現代の東京の状況が合わさったときに建築で何を表現できるのかと考え、スキンハウスとメーソンリー(※)を融合させたものとしてセル・ブリックという形で誕生した住宅です。通常の建築構造では150mmある壁厚をセル・ブリックにすることで、6mmという薄さを可能にしています。また、厚みの出る断熱材は使わずに、断熱塗料を吹き付けることで薄さが保たれ、広い内部空間が確保されています。
(※メーソンリー…組積造)

玄関から一歩入るとそこには、壁一面の収納が広がっています。

 
キッチンの壁もトイレの壁も収納OK。270個のボックスのうち、約半分が収納として使われています。
ボックス以外の約30カ所の開口部は、窓を開けることができます。



  50歳代の母親(施主)と息子が同居するこの家は、地階の個室、1階のリビングキッチン+寝室、2階には2つの個室があります。
高所恐怖症の施主は1階部分を生活のスペースにしています。そこには、キッチンがあり、リビング、トイレ、寝室までもあり、ワンルームスタイルの居住空間が広がっています。ここは施主の一番のお気に入りの場所。「新しくかっこいいだけではいや、味があるのがいい」という考えが、シンプルなキッチンをはじめ、日本に3つしかないというオリジナルのトイレなどの随所に活かされています。
地階と上の階を結ぶらせん階段を見上げると、1.5階にはテラスとつながったバスルームが浮かぶようにあります。これは、施主の「空中に浮いているお風呂が好き」というイメージが具現化したものです。建築家も考えつかないアイデアがそのまま活かされたものです。その隣には、ドラム式洗濯乾燥機が置かれています。

1階の住空間は、施主お気に入りスペースに。日中はやさしい木洩れ日のような光が差し込み、夜は間接照明の落ち着いたあかりが住空間の広がりを感じさせます。
2階には、同じスタイルの個室が2部屋あります。脚立を立てかけて、屋上へも上がることができます。

2階への階段の途中の1.5階には、広く感じさせるガラス張りのバス空間。その隣にはドラム式洗濯乾燥機のスペース。



  家を建てるときに欠かせない要素のひとつが施主と建築家との信頼関係です。
もともと自分でも物をつくるデザイン関係の仕事をされている施主は、パーツ等の細かい要望はなく、「研ぎ澄まされたかっこいいものはいらない」という考えでした。話を進める中で、双方の「おもしろいもの」という意見が一致し、初回の打合せから設計、完成までに約1年というハイスピードで完成しています。
ハードなものでもOKという施主と建築家の表現したいものが一致した結果、生まれたセル・ブリック。「建築の半分はクライアントの資質がつくる」という建築家と味のある住宅を求めた施主の出会いが完成させた住空間です。
外観夜 
日中は日差しが差し込む開口部から、夜は間接照明の明かりが漏れて印象的な雰囲気に。FRPでつくられたテラスは半透明で光を通す素材でつくられています。



所 在 地 :東京都杉並区
設   計 :アトリエ・天工人
構造設計 :佐藤淳構造設計事務所
施工管理 :ホームビルダー
構   造 :RC造(地下1階)+鉄骨造(地上2階)
敷地面積 :86.60u
建築面積 :32.93u
延床面積 :85.05u
竣   工 :2004年3月
工   期 :約180日
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