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こんな暮らしがしたい! 趣味を楽しむ工房とワクワクする遊び心のある隠れ家

和室からのリビング風景。船のような形状の天井と吊り下げタイプの照明を採用。

伊豆半島の付け根。相模灘を臨み、有数の温泉、リゾート地で知られる静岡県熱海市の高台に建つR邸。建築に対する造詣の深いRさんが大好きな熱海の地で3軒目に手に入れた家は、それまでの2軒の家とは異なり、Rさんの住まいへの思いと夢を乗せた、ひときわ目を引く船形の外観の家です。「老後を楽しむ隠れ家」をテーマに設計され、永住を意識したバリアフリー仕様になっています。
建築ウオッチングで見つけた素敵な家との出会い

熱海市は伊豆半島の東岸に位置し、四季を通じて温暖な気候に恵まれ、古くから別荘地や温泉地として知られています。その熱海の市街地から、ほぼ登りきった高台にあるのがR邸です。そこには、熱海の地が大好きな60歳代の母親(施主のRさん)と息子さんが暮らしています。
Rさん親子は、以前も同じ熱海市内の自然卿というところに住んでいました。すでに自然卿に家を所有していたため、家を新築する予定はありませんでしたが、もともと建築には興味があり、時間を見つけてはドライブを楽しみながら建築ウォッチングも楽しんでいました。そのときに、イタリアンテイストで洗練された赤茶色の玄関ドアが印象的な家を見かけ、その後も幾度か見かけるうちにしだいに気になる存在になっていました。
そうなると、エントランス周りの外観だけでは我慢ができなくなり、面識もない家にもかかわらず思い切ってインターホンを押し、家の中を見せてもらいました。中は、Rさんの想像以上に内観も素敵なデザインでした。特に、豊かな色彩感覚に魅せられてしまったのです。

北側(山側)からの外観。
左側から陶芸工房、階段室、アプローチ、2階の窓は、船をイメージした形に。

素敵な家を建てる建築家がいるなら家を建てたい

以前に住んでいた自然卿の家の前にも熱海の一戸建てを購入してましたが、どちらも中古の仲介物件でした。「こんな素敵な家を建ててくれる建築家がいるのなら、家を建てようかな」と思い始めたのが新築へのきっかけでした。そこから土地探しがスタートしたのです。
それまで住んでいた自然卿の家は、小さな温泉がついているものの、日常の生活をおくるのには周辺環境が決して良い場所とは言えませんでした。冬場の道路凍結や、別荘地であるがゆえの夜間の静けさ、市街地から離れる不便さと、なによりも急な坂道の多いことがRさんへの負担になっていたのです。一年がかりでそれをクリアできるような土地がやっと見つかり、熱海の地に3軒目の家の建築が始まりました。

南向きの2階リビングは明るく、眼下に海を望むビューポイントです。熱海名物の花火も楽しめる、広いバルコニー付き。

施主の「遊んでください」から実現した造形の家

新しい土地は、熱海には珍しく平坦な道にある南向きの高台で、海が眺望できます。ガス・下水道も通り、交通の便も良く、近隣住宅には定住されている方が多いことからも環境の良さがわかります。環境抜群の気に入った土地が見つかり、Rさんは早速、建築家に連絡を取りました。
まず、Rさんが要望したのは、「私どもは、四角い家はあきていますので、遊んでください」と設計を建築家に依頼しました。2年前にドライブがてらの建築ウォッチングで見かけた家を気に入っていたRさんは、建築家に全面的に委ねたのです。建築家は、「建築に対しての造詣と興味をお持ちの方なので、理解していただける施主」と判断し、海が大好きなRさん親子の思いを汲み取り、船をイメージした大胆な外観にデザインしました。まるで大海原に浮かぶ船のデッキ上のような家が誕生しました。

海好きのRさん親子をイメージし、船形の家が誕生。アプローチや窓にも船をイメージしたデザインが活かされている。

毎日ワクワクするご自慢のアプローチ

ダイビングのライセンスを持ち、船舶免許も取得するほど海好きの息子さんにとって、デッキのような外観は一目で気に入りました。
玄関から続くアプローチには、2階を支える鉄骨と、足元には本物の船舶照明が採用されています。夜間に照明を灯すと、家自体がまるで船が海に浮かんでいるように見える仕掛けになっています。照明を灯したときのとてもいい雰囲気にRさんは、「エントランスを入るたびに、自分の家なのに毎日ワクワクしています」と、とても気に入っておられます。夜、誰も通らないのにライトアップしたり、ゴミ出しに行くときも眺めながら楽しまれています。
建築家は、「家に帰ってきたときに、ホワッと出迎えてくれるようなあかり」をイメージしたそうです。

Rさんのお気に入りのアプローチは幅1.5m、長さ14.4mあり、バーベキューを楽しめるスポットも設けられている。

イタリア仕込みの色の完成が彩る内観

Rさんが建築家のデザインを特に気に入っているのは、「色使いの感性の豊かさ」からです。Rさんは、「日本の建築家には素晴らしい人も多いですが、色の面で不満があった」と言います。日本では無難な色が好まれ、個性的な色は敬遠されるケースが少なくありません。そんな中、かつてイタリアで学んだ建築家の経験から、R邸にも個性豊かな色使いを展開したデザインになっています。
玄関ドアには、Rさんが以前に建築ウォッチングで見つけて気に入った家と同じ、印象的な赤茶色を採用。玄関を入った左手のシューズボックスにはスカンジナビアンレッド、右手の窓枠にはグリーン、階段壁にはブルーのイタリアンスタッコを採用しています。見事な色の調和で洗練されたデザインになっています。中でも特にRさん親子を満足させたのは、イタリアンスタッコです。その硬い素材はひびが入りやすく、職人泣かせの特殊な壁です。そのため、日本で扱える職人も少なく、何度もやり直しを重ねてやっと仕上がったものです。

来客を向かえ、家族を迎え入れる玄関は、調和のとれた色使いのデザインで洗練されたイメージに。シューズボックスの上には、Rさん親子の手作りの陶器が並ぶ。

階段室から続く玄関には、イタリア仕込みの色使いでデザインを引き立てている。

本格的な窯を設えるシンプルな陶芸工房

趣味として陶芸を始めてから10年が経つ息子さんにとって念願の陶芸工房が玄関の奥にあります。当初はもう少しコンパクトな窯にする予定でしたが、息子さんの思いから大きめの窯を入れています。
内壁は、仕上げをせずにベニヤをそのまま活かしています。窯の周りは、コンクリートで耐熱を強化し、下には耐火レンガを敷き詰めています。
窓辺にはロクロ、床下には焼き物の土を保管するスペースを取り、趣味の写真の現像もできる設備も整えています。棚等は、息子さんの身長に合わせて大工さんに造作してもらったものです。

熱海での暮らしや老後をより豊かな暮らしにしてくれる陶芸工房は、シンプルで機能的な設えに。

リビングの形状や照明も船をイメージして機能的に

階段を上りきって長い廊下の奥に、キッチン、リビング、和室と続きます。
外観と同様に、内観の随所に船のイメージがデザイン化されています。壁には、船をイメージしたアーチ型の集成材をアクセントに取り入れ、集成材の表面の塗装にも工夫がされています。白く吹きかけたペンキを布でぼかすように拭いた仕上げになっています。
海側に面した大きな窓と山側に面した窓で、風通しも良く、夏場も快適に過ごせます。また、天井が平面でないため、天井に上がった空気がぶつかり合って下に流れる空気の循環も良くなっています。
フローリングには桐を採用し、板の色目からもとても明るいリビングになっています。テーブルやソファ、カーペット類のインテリアはRさんの好みですが、内装デザインとよくマッチしています。

手前からダイニング、リビング、和室。左手の窓からは、熱海の海が一望できる。

将来の夢も育むギャラリーに備えた設え

陶芸を楽しむRさん親子の将来の夢は、この家を、ご自身の作品を中心にしたギャラリーとして公開することです。それを前提に設計もされています。
階段、廊下にはピクチャーレールが取り付けられています。また、現在はリビングとダイビングに使われている部分には、造作のディスプレイ棚を設え、作品に照明が当たるようにスポットライトを簡単に取り付けることのできる工夫もされています。

リビングとダイニングの窓際には、ディスプレイ棚を造作。棚は可動式で、作品の高さによって調節できるようになっている。

バスルームには、Rさんの作品のタイル23枚が壁面のアクセントに使われている。

永住を意識したバリアフリーの工夫も

熱海という地が大好きなRさんが老後の永住を意識した家は、「老後を楽しむ隠れ家」「遊び心のある隠れ家」になっています。デザイン性だけではなく、随所に機能性も考えられています。
段差のないフローリング、階段の踏み板を通常の1.5倍に増やしたゆるやかな階段、階段途中には、広いスペースの踊り場も設けています。キッチンでは、IHクッキングヒーターを採用。照明には、船のイメージに合わせたシンプルで飽きのこないデザインを選び、交換しやすい位置に照明を配置し、蛍光灯より温かみのある白熱灯を採用しています。
陶芸工房の部屋を1階にして、生活スペースを2階にもってくることで見晴らしも良くなり、生活スペースが2階フロアだけですむという機能性も持ち合わせています。また、将来に向けて、ホームエレベーターを設置できるようにスペースも確保されています。現在は、2階部分はランドリースペースとして、1階部分は玄関左手にあるシューズボックスとして使用されています。
Rさんは、「実際に住んでみてとても使いやすい。このまま歳を取って、多少体が不自由になっても便利な機能が揃っていて安心です」と満足されています。

キッチンは火を使わないIHクッキングヒーターを採用。食器洗い乾燥機も取り付け、より便利に。

2階は階段からトイレ、ダイニング、リビング、和室まで床がフラットに。


所 在 地

:静岡県熱海市

設   計

:米村和夫+米村ふみ子
(米村アーキテクツスタジオ)

構造設計

:白須正広
(クレモナ建築構造研究所)

施   工

:小川工務店

構   造

:木造2階建

敷地面積

:481u

建築面積

:94u

延床面積

:103u

竣   工

:2005年2月

工   期

:約165日

工 事 費

:約3,200万円

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