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こんな暮らしがしたい! 急斜面を利点に変え、眺望と団欒を実現した丘の上の家

眺望のよさと空間の広がりが心地よいリビング。大型テレビとイタリアン・デザインのソファセットなど、メインルームにふさわしい上質の空間に仕上げられている。

港ヨコハマを一望する傾斜地。外国公館も多い閑静な住宅街に建った新築住宅です。急斜面にまるで“登り窯”のように建てられた鉄骨造の家は、どのフロアからも眺望が愉しめ、ホームシアターやダイニングキッチン、バスなどくつろぎのスペースにもこだわっています。傾斜した土地という困難な条件をポジティブに取りこんだ、個性的な住まいは、アットホームでありながら、異国への憧れも感じさせる豊かなイメージに満ちています。
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眺望と交通に惹かれて、 傾斜地に新築を決意
50歳代の施主のI さんは、奥様と2人の息子さんの4人家族。これまでは横浜市内のマンションにお住まいでした。通勤に不便なことや、マンションの築年数が30年を超えていたことなどから、新居を考えておられました。不動産会社で見かけた土地が、横浜港を見晴らせるとあった点に一目ぼれし、購入を決意。ハウスメーカーに相談したものの、傾斜地の土地であるという条件から、間取りや金額に満足できるものは見つかりませんでした。
■パース図
建築構造上は2階建て。一見4階建てのように見えるが、1階が3層で構成され、2階が最上階。一番下の層が息子さんの部屋、その上にリビング、ダイニングキッチンと浴室、最上階が寝室という間取り。“登り窯”のイメージがよくわかる。敷地の70%が傾斜35度の斜面。
施工中の写真
建物を支えるために、長さ40mの杭を打ち込む。
建築家と出会い、“登り窯”のようなプランに納得
建築家との出会いは、雑誌の記事でした。I邸と同じような傾斜地でレストランを設計した建築家に相談し、このプランを提案されました。
土地の高低差が8mもあり、建蔽率40%、容積率80%で、しかも風致地区であること、地域での取り決めで隣地から1m以上距離を置いて建てること等々―――。厳しい条件をクリアしながらIさんの希望を満たそうとすると、建築家には、階段上に部屋を重ねた“登り窯”のような形状のプランが最適で唯一に思えました。
建築に当たって、敷地となる傾斜面は大幅な改良工事はせず、安定した地盤まで杭を打ち込み、鉄骨造の建物を支持することにしました。崖の上なので、重機(杭打ちやコンクリートを入れる車両)は、道路面からしか搬入ができないなど施工には制約が伴いました。
雨水や生活排水は、いったん家の地下に埋設したタンクに溜め、そこからポンプで上げて、下水道に流すなど、見えない部分に費用がかかりました。Iさんは、永く安心して住み続けるために不可欠な工事と理解されています。
崖からせり出した階段状の家。屋根がわずかに右傾しているのは、北側の家の日射に配慮したため。
ダイニングキッチンを家の中心に配置
道路面からわずかに掘り込んだ階段を下りた玄関を入ると、すぐダイニングキッチンがあります。 1階ダイニングキッチンは広々としていて、キッチンは奥様の要望で、家族と会話しながら家事ができるアイランド型にしました。収納は調理器具や家電製品のサイズに合わせ機能的に配置。生活感を感じさせないスッキリとした空間になっています。
キッチンの天井の高さは2.2mとやや低めですが、部屋を仕切らず連続した空間になっているために開放感があります。ダイニングの窓からは、高層ビルのレストランのような眺望を愉しむことができます。
防火地区指定ではないので、網ガラスではなく透明ガラスを使うことができ、港の眺望を遮りません。
ダイニングとキッチンスペース。キッチン右手奥には玄関ドアが見える。
ダイニングテーブルはガラス製で部屋全体のイメージと統一。
お手入れの楽なステンレスのトッププレート。調理器具は燃焼ガスの出ないラジエントヒーター。
居住空間を最大限に活かす工夫
リビングに隣接して、浴室と洗面室、トイレがあります。これまで住んでいたマンションには、浴室に窓がなかったため、今回は「ぜひ大きな窓のある浴室にしたい」と希望し、大きなガラス窓を実現しました。近隣に高層ビルなどがないので視線を気にすることもなく、港の夜景とくつろぎを両立させるという贅沢を手に入れることができました。浴室のフロアは天然石風の落ち着いた雰囲気に。洗面室には収納を設けて、リネンや着替えをストックできるようにしています。
1坪大の広さに加え、大きなガラス窓でより開放感のある浴室に。
出勤や通学で生活時間の重なることもあるため、ツインの洗面台を設置。
最上階から1階まで真っ直ぐな階段。視覚的な面白さが感じられる。
リビングはホームシアターに、 テラスはアウトドアリビングにも
ダイニングキッチンから階段を降りるとリビングです。38uのスペースには、ソファとテーブル、大型の薄型テレビ(65インチ)があります。ご主人が「シアタールームになるような空間にしたい」と設置されました。スピーカーなど音響設備も充実される予定です。
リビングは、大きな開口部のガラス窓、サッシや階段の手すりはスチール、床や天井は木質で構成。色彩は壁の白、木調、家具は黒とシンプルにすることで、より広く感じられるようにデザインされています。部屋の中央部には床暖房を敷設。照明は、壁面に間接光でやわらかいあかりを配置、フロアスタンドで必要に応じた明るさを確保するようにしています。
また、リビングに隣接して広いテラスがあり、ガーデニングをしたり、バーベキューパーティーも楽しめます。
床・天井・収納は統一感のある木質に。エアコンも格子で目隠しをしている。畳スペースが空間に変化をもたせる。
寝室は温熱環境とプライバシーに配慮
夫婦の寝室は最上フロアに、息子さんの部屋は一番下のフロアにあります。どの部屋からも気持ちのよい港の景色が望めます。各部屋が異なるフロアとなることで、家族それぞれのプライバシーを守ることができます。
また、住宅内の空気の流れは、冬は暖かい空気が最上部に集まり、夏は窓を開けることで風通しも確保できることから、快適に自然な温度と湿度の調節ができる合理的なプランニングになっています。
夫婦の寝室は二方向が窓。港側にはベイブリッジが見える。もう一方は半透明のガラスで道路からの視線を避ける。
難しい条件が「個性」となった満足の家
完成後の住み心地については、眺望と交通の便のよさは当初の予想通り。そして何よりも家族の共有空間の周りに個室を配置した間取りから、「いつも家族の気配を感じながら生活できるよさがある」と言います。
建築家は「厳しい条件だからこそ、土地に逆らわずに設計していくことで、自然と答えが導かれたと思います」と話しています。
テラスから2階方向を見る。重なる屋根のラインが個性的。

所 在 地

神奈川県横浜市

設   計

suppose design office/谷尻誠

構造設計

なわけんジム

施   工

小松建設

構   造

鉄骨造2階建

敷地面積

207.43u

建築面積

81.66u

延床面積

138.30u

竣   工

2006年1月

工   期

約330日

平面図
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