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敷地の悪条件を逆手に、奥行きある多様な間取りを実現した家 兵庫県・川西市の家

起伏に富んだ敷地を最大限に活用。擁壁を避け、張り出した形状の建物に。

眺望に恵まれた高台に建つものの、擁壁を背負う形の敷地は南北に傾斜。平地わずか30m²程度という立地にもかかわらず、明るく快適な空間に。各室のつながりと奥行きを感じさせる“田の字プラン”の採用で、ライフスタイルにふさわしい空間を実現した住まいをご紹介します。
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2人目の子どもの誕生を機に   “新築戸建て”の住まいづくりを決意

大阪のベッドタウンとして発展した兵庫県川西市の高台に建つM邸。30歳代後半の施主Mさんご夫婦と2人のお子さんが暮らす、戸建て住宅です。
通勤に不便なことや2人目のお子さんに恵まれ、年齢的にもそろそろ建てておきたいという思いから新居を考えていました。準備資金に限りがあり、「難しいのでは」と思われましたが、知り合いの建築家に相談。「なんとかなるよ」という励ましに後押しされ、二人三脚での土地探しがスタートしました。
当初探していた大阪市内では予算内で土地が見つからず、近郊に候補地を広げて見つけたのが高台の土地。大規模造成地内の角地で、眺望、日当たりとも申し分ありませんでした。

北側外観
車道に面する部分は既存造成部分の車庫。左側は建物1階(玄関)に続く階段で、隣家と半分ずつ所有する私道。

急斜面を活かしたキューブ型の外観と 上下に奥行きのある空間を確保

しかし、敷地は傾斜地のため擁壁を背負う形になり、平坦な部分はわずか30u程度。さらに日影規制など、厳しい条件があり、それをクリアしながらMさんの希望を満たそうとすると、建築家にはキューブ型の形状が最適に思えました。地盤が砂岩質(風化砂岩)で安定しているため3階建てが可能で、ここにシンプルな間取りの各階を重ねることで、逆に多様な空間表現が可能だったのです。
擁壁・斜面を避けた1階部分の建築面積は小さいものの、2階と3階を斜面に沿って広くとることで奥行きのある空間を確保しています。

■パース図

敷地の厳しい条件が、逆にシンプルな建物に様々なおもしろみを取り込む結果に。

オフをゆったり過ごすバスルームと   施主も壁塗りに参加した趣味の部屋

道路面から階段を上り、擁壁に沿ったアプローチから玄関に入ると広い上がり口があり、左手に階段、正面にMさんの趣味の部屋があります。フローリングや壁などの色調は、京の町屋を意識して黒で統一されています。
部屋入口にあるアクセントの白いポールは、Mさんが自らペインティング。「愛着が持てる家にしたい」という思いから住まいづくりにも積極的に参加しました。
趣味の部屋の西側壁面は、コンクリートブロックを積み上げたシンプルなもの。その隣には、日の差し込む明るいバスルームです。希望通りに眺望が楽しめるくつろぎの空間を実現しています。

洗面所と一体型で洗い場スペースを広めに確保。ガラス張りが開放感をより感じさせる。

Mさんの趣味の部屋。ここからも眼下に眺望が広がっている。

階段を中心に広がり、 空間に豊かさを生む“田の字プラン”を採用

以前の住まいが暗かったことから、奥様は「とにかく明るく、風通しのいい家。上下に広がる空間と変化のある間取り」を要望。Mさんからは、「明るく開放的で、日光浴ができるスペース」というものでした。
このため階段を中心に広がる“田の字プラン”の間取りを採用。階段を上った2階には、眺望がある北側にキッチンとリビング・ダイニングを配置。斜面がある南側に日光浴ができる3階まで吹き抜けのデッキと、子どもが遊ぶプレイルームが並んでいます。デッキ部を組み入れたことで、南からの採光が部屋の奥まで差し込みます。
さらに階段を上った3階には、将来は子ども部屋になる個室2つ、その間に2階デッキ吹き抜け部分、見晴らしのよい広いバルコニー(18.56m²)があります。間仕切りがなく階段を中心につながる空間は、フレキシブルに用途に応じて使え、お互いの気配を感じる豊かな空間をつくり出しています。

将来、子ども部屋にと考えている3階部分。左奥がデッキの吹き抜け、右が階段。

人目を気にせずに、日光浴もできる2階デッキ。蛇口もあり、ガーデニングにも対応可能に。

 機能性を追求したキッチンは、家族が集うコミュニケーションの場に

キッチンは、「対面式でオープンに」という奥様の要望で、換気ダクトの関係からIHクッキングヒーターを壁際に配置し、シンクとカウンターを対面式にした半アイランドタイプを採用。カウンターは大きめのサイズ(230cm×83cm)で、作業台やテーブルとしても利用され、2つあるシンクのうち1つは、洗面の場としても使われています。
無駄のない動線を確保した機能的なキッチンからは、LDをはじめ、デッキまで見渡すことができます。水仕事をしながらも小さなお子さんへの目が届くなど、安全性も確保されています。
1階のMさんの趣味の部屋と3階の子ども部屋の中間の2階に位置するキッチンは、家族が集うコミュニケーションの場にもなっています。

西側を背に立つキッチン。隣家に接する東面と西面に開口部を取っていないことから、LDKがとても静かな空間に。

仕上げ材や間仕切壁を使わずに 実現したコストダウンとゆとりの空間

M邸では、仕上げ材や間仕切壁を減らした内装で、個性的な素材が多用されています。階段1階部分の1段目から7段目までのシックな色の踏み板は、構造用合板をオスモカラー(天然素材の塗料)で着色したもの。木目が個性的なデザインを醸し出しています。8段目から3階までは白いパンチングメタルの踏み板を採用。特注でランダムに穴を開けています。
夜、ライトを点灯した時に穴からこぼれた光が、まるで水玉のような模様に見えるのが奥様のお気に入りです。小さなお子さんが指でつかんで昇り降りできるように穴のサイズも工夫されています。
間仕切りをなくし、立体的に空間を配することで、コンパクトながらも多様なシーンのあるM邸。平坦な地が30m²程度という土地の形状を逆手にとり、実際の広さ以上に豊かで快適な住まいを実現しています。

しっかりした重厚な階段は、構造用合板を利用したもの。

■建築概要

所 在 地

兵庫県川西市

設   計

高橋俊介
(一級建築士事務所 基本フォルム)

構造設計

TAPS

施   工

シノブ工務店

構   造

鉄骨造 地上3階

敷地面積

132.34m²

建築面積

33.13m²

延床面積

106.84m²

竣   工

2005年3月

工   期

約240日

工 事 費

1,850万円

■平面図

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