一覧へ

あなたの夢や希望を実現するスタイルをご紹介します。 こんな暮らしがしたい! 景観を存分に堪能する、五感で愉しむ“終のわが家”  広島県・三原の家

瀬戸内海に面した広島県の海岸沿いに建つK邸。敷地南面に広がる海の景観を活かして、大人がエンジョイできる“終(つい)のわが家”を目的に建てられた住まいです。台風などの自然災害による暴風雨への備えをはじめ、景観を存分に堪能するための開口部やあかりなど、随所に工夫が施された住まいをご紹介します。

Point

  • 1.優先順位は、「景観を活かした住まい」
  • 2.ユニバーサルデザインのゆとりある空間
  • 3.あかりが彩る趣のある空間ともてなしの演出
  • 4.絶景を愉しむためにRC壁式構造を採用
  • 5.風雨から住まいを守る軒の深い庇と高い床下

■平面図

※間取り図内の矢印をクリックすると画像とキャプションが表示されます。

View 瀬戸内海の絶景を見る

1.優先順位は、「景観を活かした住まい」

瀬戸内の海岸沿いに建ち、敷地の2方を海に囲まれたK邸。40歳代後半の施主のKさんが、敷地の南面に広がる海の景観を存分に愉しめる“終(つい)のわが家”を求めて建てた住まいです。今は、週末などの休日に、お子さんとKさんご夫婦の家族が集う、マルチ・ハビテーションのスタイルになっています。
もともと“終のわが家”兼、多くの人をもてなすゲストハウスを建てたいという思いから、この地を所有していたKさんご夫婦。それを形にしたのが、家族で立ち寄ったレストランの設計を手掛けた建築家との出会いでした。
K邸は、Kさんご夫婦にとって2軒目の家。平日は、仕事場や学校に近い都市に建つ機能性を優先した住まいで暮らし、週末に家族そろって車で1時間ほど移動して来る、もう1軒の住まいです。日々の疲れを癒したり、釣りを楽しんだりとリフレッシュの場としての機能を担っています。
Kさんご夫婦の要望は、「景観を活かしたリゾートホテルのようなイメージで、台風による激しい波や風雨さえも愉しめるような大人がエンジョイできる住まい」というもの。具体的には、「南西の景観を愉しめる2階のお風呂」、「多くの人が楽しめるスペースのある大きなデッキ」、「暖炉」を希望していました。海外旅行やアウトドアを楽しまれるKさんご夫婦ならではの住まいへの思いが盛り込まれています。
眼下に大海原が広がる景観の恩恵を受けるということは、その一方で想定される暴風雨への強度、塩害対策なども欠かせません。「自然の過酷さを受け止めた上で、海をどう楽しむか」を最大のテーマに、CGや3Dを活用した、住まいと海との位置関係による景観の違い、消波などの検証から住まいづくりがスタートしました。

どの部屋からも絶景が臨めるよう、海に向かってまっすぐに建つK邸。

瀬戸内の海が庭のように広がるK邸。正面に見える岩子島(いわしじま)と日の光を反射してキラキラと輝く海面。

要望の1つ、2階のバスルームからは南西の景観が楽しめる。


2.ユニバーサルデザインのゆとりある空間

K邸の間取りは、3LDK+デッキのある2階建てです。1階部分の間取りは、海に面した南にリビング・ダイニング・キッチンと和室、北側に玄関。来客へのおもてなしに配慮して、キッチン裏には大きめのストックヤードとシャワーブース、玄関横には、物入れを配置。どちらも家の中からも外からもダイレクトに通じる出入り口が設けられ、裏動線もしっかり確保されています。
2階部分は、南西にバスルーム、その隣には洗面室、2つの居室。バスルームは、Kさんご夫婦の要望で、K邸で一番の絶景ポイントに配置しています。ガラス張りの眼下には瀬戸内の穏やかな海が広がり、明るい時間はキラキラと輝く波間、夜は、海を隔てて見える岩子島(いわしじま)のあかりや海原に浮かぶ島影などを愉しむことができます。
K邸では、すべての居室が南に開いていて、一つひとつのスペースを広く取っています。車椅子でも使いやすいゆったりした広さの玄関やLDK、フラットな床は、「終のわが家」を配慮したもの。火を使わないことから安全性の高いIHクッキングヒーター、家事を楽にする食器洗い乾燥機、暖房もエアコンと空気が汚れない床暖房を採用しています。
ゆるやかな回り階段には、手すりが取り付けられ、将来、昇降リフトを取り付けられるように、傾斜角度もゆるやかに設計されています。階段室を設けずに、リビングに取られた階段部分は、ゆったりした4畳大の広さを確保しています。また、階段壁面を照らすアッパーライトのあかりが、夜間の歩行をより安全にサポートしています。

リビングの中に設けることで、より広いスペースのある階段に。K邸では、フラットな床、通路幅など車椅子でも楽に通れる幅を確保したバリアフリー仕様。

昇降リフトも取り付けられるように、傾斜角度も考えて設計された階段。


3.あかりが彩る趣のある空間ともてなしの演出

スペース的にゆとりのあるK邸では、あかりは調光ではなく、スイッチングで切り替えられるように回路分けがされています。
光源を替えながら、キッチン・ダイニングなどの人が集う場所に近い部分は、手元をスポット的に照らすクリプトン電球や、ハロゲン電球で中心感を強調。白熱灯の赤味を帯びた光が、食卓の料理を立体的に照らし出し食欲をそそります。
部屋全体はバランスよく配された電球形蛍光灯で明るさを確保。華やいだ雰囲気やくつろぎ感、落ち着き感を出したりと、気分によって雰囲気をガラッと変えるあかりの演出ができるようになっています。また、壁面の間接照明がアクセントになり、広い空間に陰影のあるさまざまな雰囲気を演出しています。
照明器具はダウンライトで全体をまとめ、天井面をすっきりさせています。また、空間が広いことから、電球も省エネタイプを採用し、壁周辺を照らして明るさ感を出しています。
リビングの暖炉周辺のディスプレイスペースには、造作の収納部分にあかりを配した建築化照明が壁や天井を照らし、アクセントライトがディスプレイの品々を立体的に照射してその存在感を演出。家族やゲストを招き入れる玄関ポーチは、センサで人を感知するとあかりが自動点灯するようになっています。
日中は、海面のキラキラした光に包まれ、日が落ちたら、食卓を照らすあかり、アルコールタイムには、暖炉の炎の光という、それぞれの光が空間を豊かに彩ります。また、透明ガラスを用いた玄関とリビングの間仕切り部分からは光がこぼれ、間接照明のような役割を果たしています。

■平面図(1階)


間接照明で演出したディスプレイスペースと鉄平石を積み上げた暖炉の炎のゆらぎでLDK空間をやさしく彩る。

玄関へ通じるドアの左部分はガラスの間仕切り。玄関からの光がもれ、間接照明のよう。


階段の踊り場から4m80cm上の天井までは、アッパーライトで壁周辺を照らして明るさ感を出している。あかりで演出しながら、夜間の歩行も安全に守る明るさを確保。



4.絶景を愉しむためにRC壁式構造を採用

海に対して開いているK邸、その眺めは、どの部屋からも時がたつのを忘れてしまいそうな絶景。その眺望を柱や梁などで妨げないように採用されたのが、RC(鉄筋コンクリート)壁式構造です。
壁式構造は、柱ではなく、建物に強い壁面をつくることによって強風や地震にも強い構造で、大開口を取りやすいという特長があります。それにより、リビングは11mもあるガラスサッシの大開口に奥行6m50cm、LDの天井(2m40cm)一部に折り上げ部分をつくり、2m60cmの天井高を取り、より開放的な空間を実現しています。
眺望を最大限に愉しむために、さまざまな工夫がされています。リビングの大開口部は、南西角部分でガラスを合わせることで目線をさえぎるサッシをなくしています。また、2階バルコニーの手すりは、より海を見やすいように透明ガラスにしています。
さらに、1階部分では、開口部の高さと天井高、庇(ひさし)の高さを同じ2m40cmにそろえることで、LDKから海に向かって一続きになるように工夫。ガラス越しに広がるデッキが、まるで船首のようにも見え、海原に向かって住まいが突き進むようで、より満足感を高めています。

ゆったりした空間のLD。ガラスに光源の映り込みを防ぐのと天井を高く取るために、20cmの折り上げにしたメリハリのある天井。

LDKの南西角は、眺望を優先してコーナー合わせにしたガラス。天井高と庇の高さを合わせることで、さらに海との一体感のある眺めに。


■平面図(1階)


5.風雨から住まいを守る軒の深い庇と高い床下

日々の疲れを癒してくれる瀬戸内のおだやかな海原も台風時は一転。この周辺では床下浸水は日常的で、2階まで波に洗われることも珍しくない地域。その台風の襲来さえも愉しむ大らかな暮らしの一方、K邸では床下は、浸水などで溜まった水をポンプで抜いて排水できるように、大人がかがんで入れる75cmの高さを確保。床下の乾燥を促すために、基礎の増し打ち部分に通気口を設けるなど、木造住宅のいい部分を取り入れています。浄化槽は、海水が逆流しないようにポンプアップを採用しています。
また、デッキ部分は、リーズナブルな中でも耐水・耐久性の高いウリン材を採用、押し寄せる波を消波するように、板の間を1センチ間隔で海に向かって縦に並べています。これは、度重なる台風被害でも知られる厳島神社の対策を模したものです。 塩害には、ビル用のアルミサッシを用い、外壁も汚れにくい光触媒の吹付け塗装を用いるなどの対策が講じられています。1mある軒の深い庇や、開口部の重厚な雨戸も風雨から住まいを守ります。また風雨や海水で汚れた、2階部分の窓ふき掃除の足場としても庇スペースが重宝する設計です。
K邸では、塩害で傷みやすいデッキなどは、耐久性よりも張替えのしやすさを重視。自然とあえて戦うのではなく消耗品と捉えています。それは、大海原の豊かな住環境を享受する代償という考えからです。
台風の襲来をも大らかに受け入れ、暮らしの楽しさが凝縮されたK邸。木と石をふんだんに使った、力強くほどよい暖かさのあるモダンスタイルに仕上がっています。

開口部を風雨から守る雨戸。レールを打ち込み、南西角はコーナー合わせに。建具屋に特注で依頼したもの。

日差しや風雨から住まいを守る庇が外観のアクセントに。軒が深い庇は、2階窓ガラスの掃除にも役立っている。


■建築概要

所 在 地

広島県三原市

設   計

後藤亜貴(一級建築士事務所 後藤亜貴デザイン事務所)

施   工

鈴木工務店

構   造

RC壁式構造2階建

敷地面積

820.02m²

建築面積

153.80m²

延床面積

255.36m²

竣   工

2006年12月

工   期

約210日

照明器具、住宅設備・建材、電気設備など、
商品選びを松下電工がお手伝いします。
住まいと暮らしの商品


バックナンバー