住まいづくりで避けて通れない「契約」。土地探しや建物は入念にチェックしたものの、肝心の契約内容の確認を怠り、仲介会社任せにした結果、後で、「こんなはずではなかった」と後悔しないようにしたいもの。そこで、不動産売買に伴う最低限知っておきたい法律の基礎知識をご紹介します。「契約は交渉ごと。業者が一方的に内容を決めるものではなく、当事者双方で作り上げていくもの」と力説し、法務省法制審議会委員などを務め、不動産関連法が専門の千葉大学大学院専門法務研究科教授の鎌野邦樹氏にお話を伺いました。

| Q1: | 少しでも条件のいいマイホームを探すため、不動産仲介会社に依頼することにしました。何軒かの仲介会社に声をかけて早く探したいのですが、契約によっては、同時に複数の仲介会社に依頼することはできない場合があると聞きました。仲介会社に依頼する場合に気をつけるべき点は? |
| A1: |
不動産仲介会社などに家探しを依頼するときには、売主を探してくれる媒介契約を結ぶことになります。 ●複数の不動産仲介会社に依頼できるのは「一般媒介契約」のみ媒介契約の3つの種類は、言葉にも表れているように、物件を探す方法に直接関わってきます。 |
| 共通 | 依頼者の義務 | 業者の義務 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 他業者への依頼 | 自己発見取引 | 業務処理の報告義務 | 指定流通機構への登録義務 | ||
| 専属専任 | 有効期限は 3ヵ月以内 |
重ねて依頼することができない | 認められない *自分でも相手方を探した場合でも、当該宅建業者に媒介を依頼することになります |
1週間に1回以上 |
あり
*レインズ(契約の相手方を検索するための業者間の情報ネットワークシステム)への登録義務です登録をした業者は、登録を証する書面(登録済証)を依頼者に引き渡さなければなりません |
| 専任 | 認められる *この場合、業者は媒介契約履行のために要した費用の償還を請求することができます |
依頼された業務の処理状況を2週間に1回以上文書で報告する | |||
| 一般 | 重ねて依頼することができる | 認められる |
義務はなし |
原則なし |
|
有効期限について:一般媒介契約については法律に基づくものではなく、標準媒介契約約款により定めているものです。
※『不動産売買の手引き』((財)不動産適正取引推進機構発行)より
●それぞれのメリット・デメリットを知り、
|
| Q2: | 気に入った物件がやっと見つかり、不動産仲介会社と売買契約をすることになりました。その時に確認しておくべき点や気をつけるべき点はどんなところですか? |
| A2: |
契約の前に重要事項の説明を受けたり、文書(重要事項説明書)でその内容の確認をしていますか? ●契約に関する重要な事項が記載されている「重要事項説明書」不動産仲介会社には、対象物件の契約に関する重要事項の説明が義務付けられています。それができる人も宅地建物取引主任者の資格を有する人に限られています。 ■重要事項説明書(見本)
※『国土交通省ホームページ』より ●“契約”は当事者間の合意により成立するもの
|
契約書にサインをする前に、納得がいくまで何度でも確認をしたい「重要事項説明書」。
| Q3: | 契約を結んだ後に、もっと条件のよい物件を見つけました。購入をキャンセルしたいが、「契約違反」になるのはどの段階ですか? |
| A3: |
基本的には、契約をした時点でその契約内容に基づいて拘束されます。そうなると自分勝手にキャンセルすることはできません。そのためにも契約は慎重にしなければなりません。 ■手付の種類と性質
◎解約手付 ●「解約手付」なら手付金を放棄すれば契約解除が可能
売買契約時に買主が支払うお金に手付と呼ばれる、「解約手付」、「違約手付」、「証約手付」の3つの種類があります。それぞれに性格が異なり、「解約手付」の場合は、自分の都合で買主が支払った手付金を放棄すればキャンセルは可能です。逆に売主の方も受け取った手付金の倍返しをすればキャンセルできる手付倍返しもあります。 ●ただし、キャンセルできる期間は、「履行に着手するまで」解約手付を支払っていたからと言って、自分の都合でいつでもキャンセルできるのかというとそうではなく、「履行に着手するまで」と民法に定められています。 ■買い替え時の注意点
買う物件の契約が先行して、自分の家が思うような値段で売れないような場合もあります。予め、買い替えを条件に売買契約をします。重要事項説明書と売買契約書に、「自分が○月○日までに、○○円以上で売れなければ、新たな家の購入契約は解除します」と条件を明示して文書化しておきます。 |
金銭的負担を伴うキャンセル。契約は慎重にしたいもの。
| Q4: | 念願の都心に建つ中古マンションを購入し、新居での生活がスタートしました。ところが、幽霊が出るという気味の悪い噂があり、子どもも怯えてしまっています。売買契約の白紙撤回は可能ですか? |
| A4: |
原則は、契約したらそれに拘束されますので、売買契約の解除は難しいと思います。仲介会社が応じてくれれば可能ですが、そうでない場合には、裁判で争うことになります。いくつかの判例はありますが、裁判官が幽霊話に耳を傾けてくれるのかどうかは難しいのが現状です。そうならないためにも、慎重な売買契約が重要になってくるのです。 ●判例はあるものの曖昧な基準、リスク回避には売買契約時に対処を
過去に判例で、「自分の買った部屋で1年前に自殺者がいたのに、それを仲介会社が告げなかった」という錯誤の場合にキャンセル(契約無効)が認められたケースがあります。その基準は、「もし、そんなことを聞かされていれば買わなかった」というものです。それも裁判官により、非常に曖昧な基準になっています。 ※自殺者などの告知義務は、一般的にはその次に購入する人を対象としています。数回、持ち主が変わったような場合は、溯っての告知義務はありません。 ●“隠れた重要事項”は仲介会社に入念にチェックを
幽霊話以外にも、購入したマンション内にトラブルを起こしそうな団体や、迷惑行為をするような人がいないかは、意識的にチェックしたほうがいいと思います。入居してからでは遅いので、仲介会社に確認を依頼しましょう。仲介会社はマンションの管理会社や管理組合理事長などに確認をして情報を集めてくれます。 |
購入決定に欠かせない条件や避けたい条件はハッキリ伝え、文書化を。