家族のライフスタイルなどが変わる新年度を機に、住まいづくりの情報収集を本格的にスタートさせる方が増えています。なかでも資金面での準備、ローン計画では、十分な情報でしっかり比較検討をしたいものです。2007年4月の住宅金融公庫廃止以降、民間金融機関の取り扱う住宅ローンも多種多様化するなど、選ぶ候補が増えてきています。どのタイプを選ぶかによって、その後の暮らし方まで大きく変わってきます。自分に合った無理のないローンを組むには、何を優先し、どんな組み方をすればよいのでしょうか? そこで、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに、住宅ローンの選び方について話をうかがいました。

今、住宅ローンはどうなっているのでしょうか?
2007年の住宅金融公庫廃止を受け、民間の金融機関で取り扱う住宅ローンが多様化しています。公庫ローンに変わる長期固定金利ローンとして、公庫と民間が提携した「フラット35」と言うローンがありますが、窓口となる金融機関によっても金利は異なります。各金融機関とも、フラット35のような全期間固定タイプから短期固定タイプ、変動タイプまで、さまざまな種類のローン商品が出回っています。
住宅ローンを組むと言うと、かつては“国のローン”と言われた「住宅金融公庫」から借り入れ、不足分を民間の金融機関から、という方法が一般的にとられていました。公庫ローンが主流の時代には、金利はどこの銀行も横並び状態でしたから、どこから借りても大きな差はありませんでした。それが、2006年にゼロ金利政策が解除され、2007年4月に公庫が廃止されたことから、公的ローンから民間ローン(銀行、信用金庫、信用組合、生損保、労金、JAなど)への流れが一気に進み、ローンの種類も豊富になってきました。
長期固定の公庫ローンに変わるものとして登場したのが住宅金融支援機構(旧公庫)と民間とのタイアップ商品「フラット35」です。また、現在唯一と言っていい公的なローンに、財形住宅融資があります。これは勤務先などで財形貯蓄の制度があり、この制度を利用している人のみが受けられる融資です。さまざまな条件がありますが金利面でメリットもあるので、財形貯蓄をしている人は、一度職場に確認してみましょう。
適用金利が半年ごとに見直される
借入当初の2〜3年間は金利が固定される
借入当初の10年以上、金利が固定される
返済期間中の金利が最後まで一定
おトクな金利タイプはどれでしょうか?
「1.5%」や「1.8%」などの短期固定商品は数字を見る限り確かに金利が低いのが魅力ですが、ほとんどの場合、金利の固定期間が2〜3年と短くなっています。ここに注意が必要です。その期間が終わると金利が上がり、返済額が急激にアップする可能性があります。ですから、借入額が多くなるほど金利上昇リスクは大きくなります。表面的な数字で比較せずに、長い期間で割安なものを選びましょう。今なら、10年以上の長期固定型をおすすめします。
よく金融機関の店頭などで「1%ローン実施中」などの謳い文句が並んでいますが、飛びついてしまう前に、中身をきちんと把握しておきたいものです。実は、金利1%と言うのは、「基準金利」と言う、もともとの金融機関の金利から一定の割引がされているものなのです。割引後の金利を「適用金利」と言います。
経済状況を反映するのは、もともとの「基準金利」ですから、ホームページやチラシで目にする「適用金利」だけではなく、「基準金利」も合わせて見る必要があります。
2〜3年といった固定期間の間は値引き率が大きくても、固定期間が過ぎれば値引き率が0.4%などと小さくなるローンもあります。また、変動金利も短期固定と同様、選択肢から外して考えた方がよいでしょう。
現在のように金利が底に近い時に変動金利を利用すると、長期的には金利が上昇する可能性が高く、メリットがあまりないからです。金利を半年ごとに見直す仕組みですが、5年間返済額は変わらない特殊なルールがあります。そのため金利が上がると、返済額のうち利息割合が増え、元金割合が減ることになります。分かりにくい仕組みなので、注意が必要です。

ゼロ金利が解除されたとは言え、歴史的に見れば現在の金利は、まだ低い方です。しかし、いつまでこの低水準が続くかわかりません。
金利が上昇する可能性を考えると、現在は固定期間の長いローン、つまり10年以上の「長期固定」または「フラット35」のような全期間固定の中から選ぶのが一番実用的です。金利上昇に不安を持ちたくない人、働き手が1人の家庭などは全期間固定型がおすすめです。11年目以降の返済額アップに対応できるなら、全期間固定より金利が低い10年固定を選ぶのがよいでしょう。
返済中も安心できるプランの立て方は?
そのローンの組み方が、本当に自分の生活に合ったものなのかどうかを見極めることがポイントです。よく言う、賃貸時の家賃と同額程度なら返済ができるなどとローンを組むのは危険です。60歳時点での残高を試算しておくこともおすすめします。
住宅購入を考えたとき、「現在の家賃なみのローン返済額ですむなら購入したほうがトク」と考える人もいるようです。家賃並みの返済額でローンを組むと、貧乏になってしまいます。不動産を持つと、固定資産税、都市計画税などの税金が毎年かかりますし、マンションの場合は、管理費や修繕積立金などの出費もあります。
ローンを返済しながら、貯蓄もしなくてはいけません。4人家族の一般家庭では、年間60万円の貯蓄は最低目標にしたいところです。固定資産税や火災保険料と言った住居にかかる費用をすべて試算し、購入後もきちんと貯蓄ができるかどうかを確認したうえで、余裕をもった返済計画を立てましょう。
返済計画が具体的になってきたら、一般的な定年年齢である60歳時点でどのくらい残高が残るかを、必ずチェックしておきましょう。老後の負担を少なくするため、できれば繰り上げ返済などで60歳時の残高を減らしておきたいものです。
不動産会社などでは35年、25年などの単位で資金プランを提示してくることから、返済期間を5年単位でしか設定ができないと勘違いしている人も多のですが、1年単位で組めます。60歳で完済したい人は、たとえば33歳の方なら27年ローンを組むなどの返済計画も可能です。返済期間を短くすることが利息の軽減につながるので、1年でも短くできないか、試算の上検討しましょう。

少なくとも年間60万円貯蓄出来るような家計にしよう。
無理のない返済計画で、返済しながらの貯蓄も忘れずに。
住宅ローンを組むときの注意点は?
住宅会社や特定の金融機関にすすめられるまま契約するのは避け、幅広く情報を集めましょう。その中から、自分に合ったタイプの住宅ローンを選ぶことが大切です。また、ローン試算の際には、今の金利よりも高めに見積もることも必要です。物件引渡し(=ローン契約)の頃に金利が今よりも上昇するかもしれないからです。
「財形住宅融資」など公的融資を除き、「フラット35」や民間のローンは、住宅購入を決めて不動産売買契約した時点での金利ではなく、物件の引き渡し時の金利、つまりローン契約時の金利が適用されます。売買契約からローン契約まで半年〜1年以上かかってしまうこともあります。問題なのはその間に金利が上昇して、思ったよりも返済額が増えてしまうことです。ローン契約までの金利上昇に備え、0.5%程度多めに見積もって準備しておいた方が安心ですね。
また、「フラット35」を利用する場合は、金利だけではなく、「つなぎ融資」(住宅ローンを申し込んだ金融機関から融資金が下りるまでの間、一時的に借りるローンのこと)が発生するかどうかもチェックしておきたいものです。
住宅会社や金融機関などでは、個々人に合わせたベストプランを吟味してくれるわけではありません。無理なく返済できる金額、プランは人それぞれです。くれぐれもすすめられるプランのまま契約するのではなく、幅広く情報を集め、さまざまな試算をした上で、比較検討することが大切です。
2〜3年ではなく、10年後、20年後の家計をイメージしながら、わが家のライフスタイルにあった返済プランを練りたいものですね。ファイナンシャルプランナーなどの専門家のアドバイスを受けるのも、納得のいくプランを立てる近道かもしれません。
忘れがちな金利適用時期にも注意したいもの。金融機関の情報収集はインターネットが便利。
平成20年度の住宅に関する税制改正の、住宅資金への影響について教えてください。
住宅取得に関するものとしては、2008年中でローン減税が終了することと、2007年12月まで適用されていた「親の年齢に関係なく3,500万円までの資金非課税で贈与できる」という制度が2年延長されるという2点です。
一つ目の柱は、ローン減税が受けられるのが「今年住宅を取得して入居し、今年中にローンを借りた人まで」となっていることです。来年取得の人からは減税されなくなるので、今が買いどきと不動産業者に言われるかもしれませんが、最も大切なのは、自己資金がきちんと貯まったのかどうかということ。減税があるからといってあわてて住宅を取得するのではなく、資金面での準備を万全にすることを前提としましょう。来年の税制改正で、ローン減税が延長になる可能性もゼロではありません。
また、もう一つの柱として、2007年12月に期限切れとなっていた住宅取得資金の贈与に関する特例が2年間延長になったことが挙げられます。親からの贈与のうち住宅取得等資金については、3500万円までが非課税になると言うものです。親からの援助の可能性があるなら、利用したいものですね。ただ、住宅取得資金に関する550万円までの基礎控除の特例は2005年に廃止されているので、心得ておきましょう。
減税メリットを意識しつつも、自己資金やトータルでの判断が大切に。