住宅ローンの金利は、低金利の水準が続いています。現在は、金利の低い変動金利で住宅ローンを組まれている方が多いようです。金利が低いとその時の返済額は少なくなりますが、将来金利が上がるリスクがあります。ご家庭ごとに最適なプランが違います。住宅ローンの選び方から、返済方法、金利動向の見方まで、自分にあった住宅ローンを選ぶ方法をファイナンシャルプランナーの海宝賢一郎さんにアドバイスしていただきました。

最近の住宅ローンの動向を教えてください。
住宅ローンの金利が低い状態が続いています。銀行間の競争により基準金利から金利が引き下げられる金利優遇も続いています。
フラット35S(長期優良住宅取得支援制度)の金利引下げ幅拡大が2011年9月末で終了しました。
贈与税の非課税制度も2011年(平成23年)で終了します。住宅ローン減税は、2011年入居なら、年末ローン残高の上限は、4,000万円でしたが、2012年入居からは3,000万円になり、2013年には2,000万円となります。
現在は、住宅ローンが低金利で推移しているので、金利が低く借りられる変動金利を選ばれている方が半数を超えています。約3割は短期固定で、長期固定で借りている方は少なくなっています。長期固定でいうと、2011年9月末に引き下げ幅拡大が終了したフラット35Sは、当初10年間はフラット35の金利から1%を引き下げていました。金利が2.5%だとすると、1%引き下げされると実質1.5%と、大変優遇されていました。変動金利で借りる場合と比べても総支払い額に大きな差が出ないほど有利に借りられました。
平成23年度第三次補正予算では、フラット35Sエコが創設されました。フラット35Sエコは、東日本大震災からの復興および住宅の省CO2対策を推進するため、省エネルギー性に優れた住宅を取得する場合、フラット35Sの当初5年間の金利引下げ幅が0.3%→0.7%に拡充されます。
実際に金利の変動はどうやって知ることができるのでしょうか?
住宅ローンは、大きくわけて、全期間固定金利型、固定期間選択型、変動金利型があります。
全期間固定の金利は、「10年国債」の金利が基準になっています。 固定期間選択型は、3年や10年など借入れ当初一定期間の金利を固定するものです。
変動金利に関しては、「短期プライムレート+1%」が基準です。この短期プライムレートは、銀行が優良企業などに短期間融資をする場合の金利のことで、変動金利は、これに連動しています。
現在の金利は最低まで下がっていると考えられますから、今後大きく金利が変動するのは日本の景気が良くなった場合です。インフレ傾向になると日銀が利上げ等の金融政策を行い、そこで初めて金利が上昇すると考えます。
●景気が良くなると日銀が利上げを行う⇒金利が上がる
●景気が悪くなると日銀が利下げを行う⇒金利が下がる
※日本銀行等のデータを基に作成
景気を先取りする指数の一つである株式指数と長期金利(10年国債の利回り)は同じような動きをします。つまり、景気が良くなる要素が多くなれば、株式は買われ株価は上昇、長期金利も上昇します。
※長期金利:日本銀行、フラット35:住宅金融支援機構のデータを基に作成
※日本銀行データを基に作成
昭和63年以降の変動金利の平均は3.55%。将来の平均金利(予測値)は、これらを参考に4.0%または3.5%とする。
全期間固定金利と変動金利の違いは? どちらを選べばお得ですか?
全期間固定金利のいいところは、金利上昇のリスクがないことです。変動金利よりも金利が高い分は、将来に向けての安心、リスクを取り除くための保険料を支払っているのだと考えればいいと思います。
変動金利は、金利が低いので返済額が少なくなりますが、将来上昇のリスクがないわけではありません。金利がアップしても大丈夫、繰上げ返済もできる、という人は変動金利を選ばれても問題はないものと考えます。返済額がぎりぎりの方は、全期間固定を検討されるほうがいいでしょう。
■試算条件
借入金額:3,500万円(ボーナス返済なし)
借入期間:35年
| 変動金利 | 全期間固定金利 | |
|---|---|---|
| 借入金利 | 当初5年間:0.975% 残り30年間:2.500% (店頭金利から1.5%の金利優遇適用) |
全期間:2.500% |
| 返済方法 | 元利均等返済 | 元利均等返済 |
| 毎月の返済額 | 当初5年間:98,392円 6年目以降:121,304円 |
全期間:125,123円 |
| 年間返済額 | 当初5年間:1,180,704円 6年目以降:1,455,648円 |
全期間:1,501,476円 |
| 総返済額 (うち利息分/利息割合) |
49,572,717 円 (14,572,717 円/29.4%) |
52,551,535 円 (17,551,535 円/33.4%) |
| 融資手数料 | 定額:31,500円 | 定額:31,500円 |
| 保証料 | 全額前払い:721,350円 | 不要 |
| 団体信用生命保険 | 不要 | 毎年払い 総支払い額:2,550,400円 (金額は返済期間と借入額、借入金利で決まります。) |
※金融機関などにより、条件が異なります。
| 総返済額 | 50,325,567円 | 55,133,435円 |
※その他、登記費用やローン手数料、火災保険料などの諸費用がかかります。
保証料・団信特約料の有無によっても総返済額に差が出てきます。
ローン費用だけでなく、その他にかかる費用も確認し、総返済額を比較しましょう。
変動金利や固定期間選択型は金利が低いのでお得では?
変動金利型や固定期間選択型で、住宅ローンを借りる場合は、数年先の支払い額について考えてから借りてください。
たとえば5年固定金利を選ばれた場合は、返済額は5年ごとに見直しされますので、6年目以降の返済額を事前に確認しておきましょう。6年目に金利を見直す時に、金利が上がっていると考えておくのが確実です。変動金利は、半年ごとに見直されます。金利は上がり始めたら早いので、6年目以降に金利が上がっていたとしても、その金額で返済できるかどうかをまず見てください。
昭和63年以降の変動金利の平均は約3.55%です。銀行が融資するときの審査は金利4.0%で計算していることから考えて、変動金利で借りるときは、6年目以降に4.0%の店頭金利となった場合でも月々支払っていけるかというのを見てください。(下図参照)
6年目に金利が上がっていても、その金額が支払える人は、変動金利で借りても大丈夫だと考えます。当初5年の金額だけを見て借りるべきではありません。
6年目以降も金利が上がっていなかったら、その分は得をしたと考えて、貯蓄に回したり、繰り上げ返済に利用されることをおすすめします。また、住宅ローン控除も受けられますが、住宅ローン控除で戻ってくるお金は期待せず、教育費や繰り上げ返済の費用と考えておくといいでしょう。
前提条件:借入額3,500万円で35年元利金等返済。店頭金利が2.475%。
1.5%の金利優遇で適用金利が0.975%として試算。6年目以降も1.5%の金利優遇が適用。

住宅ローンは、組み合わせて借りることができます。将来、金利上昇リスクがあるが、金利が低い変動金利タイプと、金利上昇のリスクがない長期固定金利タイプ、それぞれのいいところを組み合わせるのです。
組み合わせの割合で、月々の返済額は変わります。長期固定金利の割合を多くすれば、総返済額は高くなりますが、金利上昇のリスクは分散されます。(下図参照)
ただし、ローンは借りるときに諸費用がかかるので、組み合わせを増やすと諸費用がかさみます。全体の費用をみて選んでください。今は、長期固定の金利が低いので、長期固定金利と変動金利を組み合わせて借りるのはメリットがあると思います。
前提条件:借入額3,500万円で35年元利金等返済。
店頭金利が2.475%。1.5%の金利優遇で適用金利が0.975%として試算。
6年目以降も1.5%の金利優遇が適用。
| 借入割合 | 固定:変動 7:3 | 固定:変動 5:5 | 固定:変動 3:7 | |
|---|---|---|---|---|
| 借入額割合 | 固定:2,450万円 変動:1,050万円 |
固定:1,750万円 変動:1,750万円 |
固定:1,050万円 変動:2,450万円 |
|
| 毎月の 返済額 |
当初5年間 0.975% |
117,103円 ↓ |
111,757円 ↓ |
106,410円 ↓ |
| 6年目以降 2.5% |
123,977円 | 123,212円 | 122,448円 |
| 6年目以降 アップ額とアップ率 |
6,874円 5.9%アップ |
11,455円 10.3%アップ |
16,038円 15.1%アップ |
長期固定金利と変動金利を組み合わせてローンを組む場合、借入割合で将来金利が上昇したときの支払い額に差がでることがわかる。長期固定金利の割合が多い方が、返済額が高くなるが、金利上昇のリスクは分散される。
ローン減税のローン残高上限が来年は下がります。優遇策も減りました。住宅はいま買うべきでしょうか?
住宅ローン減税のローン残高の上限が来年(平成24年)は3,000万円になりますが、これについては、実際は大きな影響はないと思います。約3,500万円のローンを組み、年収が約500万円であれば、所得税+住民税からの控除上限97,500円(所得税を上回り控除しきれなかった分は住民税から控除)分を足しても、ローン残高1.0%の35万円全額が還付される人はそんなにいないと思います。所得税を多く納めている世帯であればメリットはありますが、そうでなければ大きな差はでないでしょう。
まったく住宅購入を考えていないのに、どんどん優遇策が減っていくから早く買わなくては!と焦る必要はありません。ただ、住宅購入を決めていて、話が具体化している人は、購入時期を早めることは悪くありません。
頭金が足りません。今年の住宅購入はあきらめたほうがいい?
住宅購入は、タイミングが大切です。場所や広さ、価格…さまざまな希望の条件にぴったりのまさに理想の住宅が見つかったけれど、頭金が足りない場合、どうするか?確かに、頭金は購入価格の2割は用意するようにと一般的に言われています。頭金が多いほうが、低い金利で借りられたり、毎月の返済額が少なくなるなど、メリットは多いのです。ただ、頭金が足りないからといって、せっかく条件に合う住宅を見つけたのに、あきらめるのであれば、その前に、頭金なしの場合の支払い額を計算してみてください。
たとえば、3,000万円の住宅を購入するのに、頭金300万円を貯めるのに数年かかり、頭金が貯まったときに金利が1.0%アップしていたとしたら、3,000万円を頭金なしのフルローンで借りる場合と頭金300万で2,700万円のローンを借りる場合では総返済額が同じくらいになるのです。
家計の収支とのバランスが問題で、きちんと返せる額であれば、問題ないかもしれません。
住宅ローンは借りられるだけ借りればいい?
住宅ローンは、安全に無理なく返せる返済額の範囲内で借りなくてはいけません。返済比率は税込み年収の20〜25%と言われていますが、返していける額は、人によって違ってきます。人生のイベントをライフイベントといいますが、ライフイベントの中で住宅購入の優先順位が高いという方は、頑張って返していけるかもしれません。住宅購入よりも旅行に行きたいなどが優先であれば、レジャー費用なども考慮して、返済額を考えましょう。
マンションの購入をお考えの方は、契約時から竣工までに数年かかることがほとんどだと思います。住宅ローンは、引渡し実行ベースなので、契約時より金利が上昇している可能性が考えられます。引渡し前の2〜3カ月前に、契約した住宅ローンの金利の状況を見ておくとよいでしょう。金利が変わり、返済が難しくなる場合は、あらためて住宅ローンの設定を見直してもらうようにしましょう。その点、財形住宅融資は、申し込み時の金利がそのまま適用になるので安心です。
繰り上げ返済とは、どういう仕組みですか?
住宅ローンは、毎月の返済と別に、まとまった金額を元金分として返済することができます。「元利均等返済」を選択されている場合は、特にメリットがあります。元利均等返済の場合、最初の頃の返済額は、多くが利息部分です。繰り上げ返済を行うと、元金部分とそれにかかっている利息分も一緒に減らすことができます。
ただし、返済期間が減っている場合は、あまりメリットは感じられないこともあります。返済予定表をみて利息と元金の割合が逆転した場合は、余裕ができたら繰り上げ返済をする、という考えでいいと思います。

繰上げ返済は、「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。期間短縮型は、繰り上げ返済した部分がまるまる減るので、住宅ローンの返済終了が早まります。期間短縮型で返済をすると、毎月の返済額は変わらないのですが、元金の減りも早くお得です。
ただし、期間短縮型の中には、期間の最後から短縮される方式のものがあります。これは、利息の軽減が少なくなりますので、繰上げ返済をするときは、中抜き方式かどうかを確認してください。
返済額軽減型は、繰り上げ返済額が、残りの返済期間全体の元金から差し引かれますので、毎月の返済額を減らしたい場合はこちらになります。繰り上げ返済をする前に、どちらの方式になるか確認しておきましょう。



●24回目の返済と同時に期間短縮型の繰上げ返済を実施
約100万円を繰上げ返済に充てると25回目から42回目までの18回分の元金を先取りして返済することになる。
【メリット】
・18回分が短縮
・18回分の利息分を払わなくて良くなる(利息負担の軽減)
(約124万円が軽減される)
繰上げ返済の手数料が無料の場合は、どんどん返済していきましょう。フラット35は、繰り上げ返済は100万円から、民間の金融機関では、10万円単位で返済できるところもあります。返済手数料がかからないものも出ているので、借りる際に確認しておきましょう。
2〜3年ごとに100万円返せるぐらいの貯蓄を目標にするといいでしょう。ただし、そのために家計を圧迫したり、ゆとりのない暮らしになるのであれば、見直す必要があります。
変動金利で借りている方も、先のリスクを考えると繰り上げ返済はおすすめできます。
また、ローンを組むときに、定年までに返さなくてはと無理に住宅ローンの期間を60歳までにするために短く設定して、月々の支払い額を無理しなくてはならない場合は、返済終了が60歳を超えていても、繰り上げ返済で、60歳までに終わらせるようにすればいいのです。老後に住宅ローンは残さないようにしましょう。
今は金利が低いので、借り換えをしたいと考えています。
10年ほど前に住宅ローンを組まれた方は、今に比べて金利が高かったと思います。住宅金融公庫融資を利用した段階金利の方は11年目に入り、金利が4%程度にアップした方もおられるでしょう。残高と諸費用を計算し、借り換えをした場合、将来の支出をどれだけ削減できるか計算してみましょう。
変動金利で借りられている方で、将来金利が上がったころをみて、長期固定に切り替えますとおっしゃる方がいます。金利の動きというのは、長期固定金利が上がった後に、変動金利が上がるのです。変動金利から長期固定への借り換えの場合は、金利の動きを意識して見ておく必要があるのです。
変動金利や短期固定金利で借りていた方は、借り換えでフラット35も利用できますので、長期固定金利が低い時期であれば、借り換えを考えてもいいでしょう。その場合、必ず諸費用も含めて、最終的な総支払額が安くなる方を選ぶといいでしょう。
リフォームでも、住宅ローンは使えますが、二重ローンにならないようにリフォーム費用はできるだけ自己資金で準備したいものです。
これから、戸建て住宅の建設予定をされている方は、15〜20年後のリフォームについても考えておきましょう。マンションのように修繕積立金がない戸建て住宅は、いざリフォームをしなくてはいけなくなったときの資金に困ることがあるようです。できれば、戸建て住宅でも積立金として貯金しておくといいでしょう。
太陽光発電システムの設置をお考えの方も多いと思います。今は、システムの設置には、国や地方自治体から補助金が出ることがあります。地方自治体では、助成額が地域によりそれぞれ違いますが、条件が合えば国からも補助金を得ることができるのでお得です。
新築のときに、太陽光発電システムを導入しておけば、設置費用は住宅建築費用と一緒になるので、住宅ローンで支払うことができ、設置費用の負担が軽減されます。建築後は、月々の光熱費が安くなりますし、今では太陽光発電の買取制度もあるので、お得です。買取価格は毎年減ってきています。買取価格は、申し込み後10年間は申し込み時の金額なので、お考えであれば、早めに導入されるといいでしょう。
リフォームを考えています。どんな補助金がありますか?
リフォームには、さまざまな補助金や助成金がありますので、うまく活用することをおすすめします。リフォームは、場所によって少しずつすると、最終的に費用がかさむ場合があります。まとめてリフォームすることで、コストを抑えられるかもしれません。
例えば、省エネ改修や耐震改修、バリアフリーリフォームをすると、要件をみたせば一定の割合が所得税から控除されたり、固定資産税の軽減などがあります。また、リフォームをされる場合、1981年の建築基準法改正前に建てられた建物は特に、一緒に耐震診断をされておくといいでしょう。最近は、耐震診断費用に助成金が出る場合も多いので、お住まいの自治体に問い合わせましょう。
たとえば、リフォームで太陽光発電システムをお考えの場合は、二重サッシ+断熱をまとめてすることをお勧めします。光熱費削減効果が高くなりますし、リフォームの内容によっては、少しずつリフォームするよりも、まとめてする方が、工事費用が安くなることが多いようです。また、要件を満たしていれば、通常の省エネ改修よりも控除対象限度額が高く設定されています。
いずれリフォームを考えているなら、補助金や助成金が利用できるうちにしておいたほうがいいでしょう。補助金はいつまでもあるわけではありませんし、予定金額を超えると打ち切られることがほとんどです。
低金利の今だから言えることは、建設費は高くても、10年後も修繕費がかからないような住宅を考えておきたいものです。住宅建設ではイニシャルコストを抑えると、あとあとランニングコストがかかってくることがあります。金利が低い今だから、いい建物を建てておくという考え方もあるのです。
また、家は不況のときに買いましょう。不況の時は、金利が低いことや国もさまざまな優遇策を出してきます。土地をお探しの方は、売りに出している人は安めに出している可能性もあります。建物も値引きされていることも多いようです。今はじっくり住まいを考えられる時期といえます。